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2016/03/31

〝いのち〟について考える

tusin176_fukinoto.jpg4月1日の定例研修会で、生命と環境というテーマで講演するため、今一度生命(いのち)についての考えを整理してみることにしました。

最近、毎日のようにマスコミで痛ましい事件が報道されています。世界ではISやタリバンによる無差別テロ、アメリカでの銃乱射、国内においても殺人やいじめ、虐待など、人為的な原因で命をなくす痛ましい事件が相次いで発生しています。私もかつて学校現場で、機会あるごとに〝いのちの大切さ〟について生徒達に話をしてきましたが、これらは家庭において幼児期から機会ある毎に繰り返し教え込んでいかなければならないと感じています。これまでも、生徒達を対象に〝いのちについてのアンケート〟が実施されてきていますが、人間は生き返るという回答が増加してきているという衝撃的な結果が示されています。これはゲーム感覚で死んでもリセットできるとか、誕生の喜びや死の悲しみを感じないという子どもも多いということではないかと思います。

東京大学の名誉教授である養老孟司氏は次のように語っておられます。

〝人々は「いのちの大切さ」という言葉を使うが、私はいのちではなく「生きもの」という言葉を使う。私がこの言葉を使わないのは、この言葉が自分の議論に適切ではないと感じるからである。いのちは概念的な言葉で、概念を大切にするのは危険である。「生きものを大切に」といえば、具体的だからすぐに反応が出るであろう。そんなことを言っても、人はウシを食べ、ニワトリを食べるじゃないか。反論が出るからこそ、生きものと表現したほうがいい。いのちと概念的に表現すると、そこをごまかすことになりやすい。でも今は到底ごまかして済む時代ではない。生きものが大切だということを子どもにきちんと教えられるようでなければ、「いのちを大切に」などと言えない。・・・(略)・・・日本人は魚を好んで食べる。それが健康食だというので、いまや、欧米人も魚を多く食べはじめている。マグロは絶滅にひんしているという。将来マグロの絶滅は日本人のせいにされるであろう。いのちを大切に、と呑気にいっている段階ではない。生きものを大切にしなければならないのである。生きものを大切にしなければならないのである。

・・・(略)・・・見えないところに、どれだけのいきものがいるのか。見えない世界の生きものについて、考えたことがあるなら、日本中がこれだけコンクリート詰めになるはずがない。どれだけのミミズを殺し、モグラの住居を奪い、セミやオケラの世界を潰しているのか。・・・(略)・・・それで、「いのちを大切に」という。いのちを大切にしていないのは、子どもではなく、大人である。子どもはそれに影響されているだけである。〟

 今一度、いのちや生きものについて考えていきたいものです。(中尾直史)

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